2005年11月18日

Peeping Tom

夜の東西線。漢文漬けの一日を終え、疲れた体をひきずりながら帰宅する途中。僕は不思議なガイジンさんと出会いました。

スーツを着てスーツケースを持ったエリートビジネスマン風の彼は、僕と同じ車両に座っており、一心不乱に何かを読んでいた。 集中しているそのお顔がまたイケメンだ。僕が女だったらFuck meとか言ってたに違いない。

このイケメン兄ちゃんは一体どんな本を読んでいるんだろう、僕も参考にしたい!彼にあやかりたい!日米イケメン同盟を締結したい!
ということで、僕は彼に接近しました。

覗き込んで驚いた。
彼が読んでいたのはHUNTER×HUNTERの2巻だった。

ご存知の方も多いと思いますが、HUNTER×HUNTER(ハンターハンター)とは、週刊少年ジャンプに連載中の人気漫画です。 「連載中」というのは少し正確さを欠いた表現で、厳密に言うと「不定期連載中」ですかね。 作者の冨樫先生はいまや休載の帝王として有名になってしまいました。2004年は遂に休載率50%の大台を越え、 2005年も右肩上がりに休載しまくっています。そうそう、冨樫先生、来年の1/23発売号までまた休載らしいですよ。丸々二ヶ月、 ハンターハンターはお休みです。死んでほしい。
さらにこのマンガの凄いところは、下書きを堂々とジャンプに掲載してくること。 普通にへのへのもへじとか描いてありますからね。 背景も何も無い完全に真っ白なコマがやたらと多かったり、棒人間みたいのが描いてあったりと、やりたい放題です。
さすがにコミックスになると大幅に加筆・修正されており、「あ、このキャラってこんな顔してたんだ!」 などと、まるで別の作品になっていて面白いのですが、その加筆作業のためにまたジャンプでの連載を休載するという悪循環。 僕も最初こそ冨樫先生の無気力ぶりに憤っていたものの、最近では、たま〜にジャンプに載るあの下書きはハンターハンターの体験版に過ぎず、 本当のハンターハンターはコミックスで読めるんだ、と割り切っています。長々と紹介してしまいましたが、ハンターハンターてのは、 まぁ僕にとってはかなり面白いマンガの一つなんですよ。

で、そのガイジンさん、普通の日本語のコミックスのハンターハンター第2巻、 ブハラが豚の丸焼き70頭を一瞬で食べてしまったシーンのところを読んでたんですね。ハンターってガイジンにも人気あんのかな〜、 日本のマンガを普通に読むぐらいだから、この人相当長い間日本にいるんだろうな〜、とか考えながら、 前に座ってる女の子をボケーっと眺める僕。

5分ぐらいたったでしょうか、どれどれ、今はどこら辺を読んでるのかな‥? と再びガイジンさんを覗き込むと、これがビックリ。彼はさっきと同じページをじっと凝視していました。さらに、 手には電子辞書を握りしめています!

こ、こいつ‥和英辞典ひきながらハンターハンター読んでいやがる!

僕は戦慄しました。彼は全然普通になんか読んでなかった。歯を食いしばって、必死でマンガに向き合ってた。まさに、 作者と読者の真剣勝負だ。そのマンガの作者は全然真剣ではないが。

でもさ、マンガって辞書ひいても読めないと思うんですよね。とりあえず日本のマンガは。
まず、文法上イレギュラーな表現がやたら多いじゃない。ほとんどが話し言葉だからさ。
試しに、そのガイジンさんが読んでいたページの台詞を書き出してみましょう。

「うんおいしい!(ガツガツ) これもうまい!(ムシャムシャ) うんうんイケる(ボリボリ) これも美味」
「ゲ〜ップ」
「あ〜〜、食った食った もーおなかいっぱい」

この台詞を、外人さんの気持ちになって、手持ちの電子辞書の和英辞典で解釈してみます。
「うんおいしい!(ガツガツ) これもうまい!(ムシャムシャ)」。ここまでは大丈夫そうです。意外にも、和英辞典には「ガツガツ」や 「ムシャムシャ」という擬音がふんだんに載っていました。

問題は「イケる」という言葉。これはどうしようもない。あのガイジンさんも、「Oh,my God!!なんでここはKATAKANAとHIRAGANAが混ざっているんだ!?」と地団駄ふんでたに違いない。 試しに「いける」で和英辞典をひいてみると、生ける活ける行ける‥などと、的外れな単語がズラリ。実際、 日本人の僕でも「イケる」という言葉についての厳密な説明は難しいところです。よくよく考えてみると意味がわからん。

さらに、「ゲ〜ップ」の部分。「げっぷ」で辞書をひけばちゃんと出てくるのですが、 果たしてそこまでたどり着けるのか。「げっぷ」をひくことができたとしても、「Disgusting!!彼はローンを組んだんだね、 ご利用は計画的に!」とか言い出して「月賦」と勘違いしたりしないだろうか。心配でしょうがない。
まぁ明らかにゲップをしてる絵がついているんで、そんな勘違いはしないか‥。

でも、英語圏の人が日本のマンガを読むのはやっぱりキツイものがあると思うんですよ。彼らは横書きの文字を左から右に読むけど、 日本のマンガの場合は縦書きの文字を右から左に読むじゃないですか。しかも効果音とか擬音はだいたい横書きで描かれている。 こんなの読む気しないと思いますよ。

日本のマンガって、翻訳されてヨーロッパやアメリカでも普通に売られてるんですけど、レイアウトがだいぶ変えられてるらしいですよ。 原稿は左右反転でコピーされて製本されるんです。こっちの本は右にページを繰っていくけど、向こうの本は左に繰りますからね。 ちょっと読んでみたことありますけど、全く別のマンガみたいになってた。効果音とか擬音も、 Dooooooom!!などと、訳の分からない音になってた。台湾で読んだ日本のマンガは、 台詞が漢字だらけなのを除けば全く違和感無かったです。あぁ、台湾行きてぇなぁ。

それにしても、あのガイジンさんが電車の中でそこまでしてハンターハンターを読む動機が、僕には皆目見当がつかなかった。 ただの趣味にしてはあれは頑張りすぎだ。なんかの仕事でやってるんでしょうかね?
「ヘイ、Tom、明日までにHUNTER×HUNTERを全巻全訳しておいてくれよ、 この契約はわが社としても絶対に成功させたいんだ」
「Yes,Sir」
みたいな。一体どんな契約だよ、Tom。

みんなの予想も聞かせてください

この記事へのコメント
あはは…なんかすごいウケた。2巻て数字がリアルだな。たぶん、なんとかその調子で1巻を読み終えたとこなのだろう。

仕事でやるにしちゃ日本語知らなさげだよな。英会話の先生かなんかで、先週、かわいい教え子にmy favorite MANGAすすめられて、あ、先週言ってたマンガ読んで話題合わせなきゃ、と思って、出がけ、本屋でとりあえず2冊買った(これから授業に向かうとこ)、みたいな気がしました。根拠なし。

関係ないけど、ここ1、2週間、いろいろあって、家でひさびさにくつろぎモード(今朝、授業と授業の合間にコメントしてしまった。変な日本語だったらごめん)。寒いからナベで飲んだりとかしたいね。11月はコミコミで忙しめなんだけど、12月入ったら1度ぐらい君んちにでもお邪魔するかも。そんときはよろしう。
Posted by ツイシィ at 2005年11月18日 19:31
ひさしぶりにきた!わらたよ。
Posted by コンコン at 2005年11月19日 00:43
わらたわらた。
なんでだろうね。Tomに次はデスノートをすすめたい。

ちょっとずれるけど、大学の友達が丸の内線乗ってたら、向かいに座ってたアラブ系の初老の男性がコーラン読んで突然泣き出したらしい。
大きなカバンも持ってたそうで、彼は即座にテロだと思ったそうな。

でも、結局一緒に本郷三丁目でおりて大学の方に歩いて行ったから、ただの語学教師だったのかも。
Posted by マレオ at 2005年11月19日 02:17
つーか完全に向き合うマンガを間違えてるよな。。。

多分誰かに薦められたんだろうなぁ。

日本人がスヌーピーを読んでnativeに近づこうとするように。
ゴンは日本のスヌーピーだよ!っていう具合に。
Posted by あき at 2005年11月19日 02:38
てか、いつになるかわからないけど
この先、続きを読んでった時が気になる・・

だって、はんたーはんたぁって
この先どんどんグロくなってくじゃん!!

その時、その外人さんはなんて思うん?
「日本ってこえー!ホラー映画ばっか作ってるし
 日本人気持ち悪いぞ!!あいつもこいつも趣味わりー!」
とか?
Posted by ちー at 2005年11月19日 17:49
>>ツイシィ
うん、ある程度筋が通った推理だなぁ。語学教師っていう予想は完全に俺の頭には無かったわ。

鍋、いつでもいいぞ。今年は君が来るのに合わせてコタツの封印をとくことにするよ。


>>コンコン
はやく秋葉原行こうよ!?


>>マラオ
デスノートはある程度教材として良い気がするなぁ。登場人物たちの思考がやたら多いけど、その文はけっこうしっかりした日本語だし、あの絵柄はガイジンさんたちにはウケる。と思う。なんか和風な感じだから。

そのコーラン男は俺もテロリストだと思うと思うよ‥。もはやコーランって血生臭い印象しかないからね‥。


>>あき
あんなに暴力的で頭の悪いスヌーピーはいないよ‥。俺、本当にゴンって嫌いだ。

でもハンターを日本入門として薦める日本人というと、やっぱり2ちゃんねるの皆さんだと思うんだよね。
家庭教師しててわかったけど、本来少年ジャンプを読むべき小・中学生なんかには、ハンターって全然人気ないの。絵が汚いとか気持ち悪いとかよくわかんない、とか言って。そして、ハンター大好きなのは少年なんかじゃなくて、おっきいお兄ちゃんたちなんだよね。俺も含めて。


>>ちー
なんか俺の印象だと、ガイジンさんたちって日本人よりも、エロ・グロに耐性あるような気がするんだけど‥。どうなんだろ。
まぁハンターがグロい時ってのは、冨樫先生が精神に失調をきたしてしまっている時だから、生温かく見守ろうよ‥。

てか、日本ってそんなにホラー映画作ってるかなぁ?まぁ確かに洋画のホラーと邦画のホラーは「恐怖」の質が違うから、ガイジンさんは「趣味ワリー」って思うかもね。
Posted by EBA at 2005年11月20日 21:58
デスノート、日本人のわたくしは、文字が多くてつらいのです・・・
論理を追わなきゃならなくてつらいのです・・・
間抜け作みたいに、頭をどっかんとやらかしたくなってしまうのです・・・

あ、でも絵柄は確かに受けそうだ。
あ、ねこぢるとか読んだらどう思うんだろうなあ。
スヌーピーが腹切って腸をどばどばだしてるようなもんだから。

そういえば、岡田斗司夫っていうBSマンガ夜話にでてたおたく評論家がハンターハンターは人生の書だみたいなこと言ってたよ。
なんかの雑誌の「好きな漫画べすと3」みたいなコーナーで色々な人に聞いてるんだけど、ハンターハンターをあげてたのは彼だけでした。
だからやっぱEBAの言う通りなんだろうね。
Posted by マラ雄 at 2005年11月21日 01:13
>>ムレ雄
実際最近のデスノートは話自体がつまんないから、文字の多さに耐えられなくなってくるよな。Lというキャラクターの存在感がその不在によって浮き彫りになった感じだ。

ハンターが人生の書、ってその人ちょっと終わっちゃってると思うけど、実際ハンターは少年誌の中じゃ図抜けたマンガだとは思うよ。シナリオ、画力、台詞回し、そして休載の多さが。

で、ねこぢるってなに?
Posted by EBA at 2005年11月22日 11:36
ねこぢるっていう自殺しちゃった人の漫画。
一見かわいらしいタッチの猫のキャラクターなんだけど、
そうとうグロイの。
だからスヌーピーが腸たらしてる感じかなあ、なんて思い。
トムショック、かなあ。なんて。
Posted by モレ雄 at 2005年11月23日 01:44
>>モレ雄
屁〜、俺そのマンガ知らないや。持ってるなら是非貸していただきたい。
ちなみに昨日、荻窪駅で柱に寄りかかりながらこち亀読んでる白人男性を見かけました。たしかにこち亀って、日本の伝統と現在の状況を知るのに良いテキストかも、と思った。
Posted by EBA at 2005年11月24日 07:03
わかた。探してみるわ。
外国のメディアで日本人がでてくると、ちがうよ〜ってよく思うけど、逆の場合はどうなんだろうね。
こち亀ってこてこての日本人対外国人っぽい日本人もしくは外国人みたいな構図がなかったっけ?
Posted by ムレ雄 at 2005年11月24日 13:59
>>ムレ雄
最近のこち亀は、日本人の現状はけっこう正確に描写されてると思うんだよね。時事ネタがやたら多いし。もちろん極度にデフォルメされてるけど。
対して、外国人の描写はやたらとステレオタイプ。外人の女はすべからく巨乳で強気。メチャクチャですよ。てか話自体ふつうにつまんないからなぁ。
でもつまらないから逆に気負い無く気楽に読めるってのも事実だねぇ。
Posted by EBA at 2005年11月25日 07:12
やっぱ巨乳か。トム怒っちゃうよ。
Posted by moreo at 2005年11月25日 14:39
>>moreo
向こうの人々は気付いてるんだろか。極東の日本という島国では、アメリカという国は巨乳とハンバーガーとピストルの国だと思われているということを。
俺は西洋に行ったことないからわかんないけど、どうなんスか?
Posted by EBA at 2005年11月27日 00:34
いや、俺も台湾しかいったことないよ。
まあ、偏見はどこの国でもあるんだろうけど。
Posted by モレ雄 at 2005年11月27日 01:05
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